6月は私の誕生月です。JR四国では破格のバースデー切符の使えるタイミングであり、時間と体力に余裕があればJR四国を利用して、どこかに行ってやろうとタイミングを計っていました。今の部署に異動になってから、月曜日に重要な会議があり金曜日は会議の準備、月曜日は報告と3連休が取りづらいうえに、重い案件になると休日もなにかと気分が沈むこともあるのが常でした。ところが、今月は2週続いて私の事案がなく、まさにストレスフリー、週の中頃から今週末が最大のチャンスとワクワクしておりました。
松尾芭蕉が「漂泊の思ひやまず」と奥の細道に書きましたが、人は多かれ少なかれ旅に憧れを持ち続けているのではないでしょうか。私の好きな映画に「男はつらいよ」があります。なぜ、ワンパターンのあの映画がこれ程支持されているかを考えたら寅さんが日本中を旅して、見たことの無い景色や人情に触れるのを見て自身の漂泊の思いを、寅さんに重ね合わせていたからではないでしょうか。漂泊の思いの疑似体験とともに、憧れのマドンナとの恋。それが成就しないもどかしさに、現実の世界を重ね合わせてまさに「おもしろうで、やがてかなしき世界観」が旅の終わりの寂寥感にも似た、切ない気持ちになりたくて日本人はまさに、盆暮れの「男はつらいよ」の上映を楽しみにしていたのではないでしょうか。
今回は3連休は無理そうですが、土曜日なら目一杯無理をしても大丈夫そうです。西に行くか、東に行くか考えます。東と言っても四国からの東で、せいぜい関西くらいまでです。東で考えたのは、湖西線の旅です。比叡山から見下ろす、琵琶湖の風景は田舎育ちの私には格別です。天下を獲りの要衝かつ、日本文化の原風景と言われているところでありゆっくり回ってみたいと考えていました。司馬遼太郎が「街道をゆく」で「このあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、この国がすきである」と書いています。「よし、近江にいこう」とそろりそろりとネットを調べ始めていました。
ところが、日経新聞に「芸備線」の記事が載ったことで考えが変わりました。記事のタイトルはこちら。
中国地方の乗客減20区間、JR西「自分事として考えて」
JR西日本は単独での維持は困難で、備中神代から備後庄原までの存廃議論を関係する市町村に要請をしているようです。JR四国も予土線、牟岐線あたりが同様の議論がされており今のうちということで、特急むろとに乗ってきたところです。そうなれば、まずは芸備線に乗ろうということで急遽スケジュールが変わります。早朝に出発、あわよくば広島の友人と合流ということで今週末は、芸備線の旅が決定しました。
新型やくもの伯備線で新見まで行き、芸備線に乗るのが簡単ですが伯備線は乗車経験もあるので津山線、姫新線経由で新見に行くこととします。岡山に勤務していたことがあるので、津山線や姫新線の沿線を車で通ったり日帰り温泉を利用したことはあるものの、子供が小さかったこともありマイカー利用でした。
芸備線を利用するには早朝か、昼過ぎしかありません。ということで必然的に、高松→岡山→津山→新見の接続が限られてきます。まずは8.21 岡山発 津山行に乗らなければすべての計画が水泡に帰します。当初、6:46発のマリンライナーで行くつもりでしたがe5489で広島までの乗車券をうまく買うことが出来ず、みどりの窓口で切符を買って7:08発のマリンライナーで行くこととします。
意気揚々と高松駅到着。一応ミラーレス機は持っていますが、機動性の問題からここからはiPhone12での撮影です。みどりの窓口に行くと「6:50」からとシャッターが閉まっています。ガーン、ささっと切符を買って、ちょっと余裕をもって朝コーヒーでも飲もうと思っていたのに段取りが狂います。以前、岡山に勤務していたときに高松に出張に来て、後輩とお酒を飲んでいた記憶はあったものの、気がつくと高松駅のベンチで寝ていた時がありました。財布は空っぽ(取られたのではなく、全部呑むのに使いました)、仕事に遅れるわけにもいかないので、みどりの窓口でクレジットカードで切符を買って、始発のマリンライナーで帰ったことがありました。苦い経験則からですが、みどりの窓口は早朝から開いているものとの認識でした。
余裕をこいて7:08発のマリンライナーに乗り遅れると、計画が即終了なので思わず開店前に先頭で並んでしまいました。程なく、切符をゲットし放尿+コンビニでサンドイッチを買って、いざマリンライナーにフェードインです。
土曜日なので余裕で、窓際をゲットです。
ほどなくして、発車です。
車窓からアンパンマン列車がチラ見できました。
ゆうゆうアンパンマンカー用のキハ185でしょうか。
鬼無の貨物ターミナルも走り抜けます。
ここぐらいからマリンライナーが加速していきます。アプリで見てみると130キロ出ていました。2700系が、8000系がといいますが、こいつは羊の皮をかぶった狼ですね。
このあと坂出あたりからごっそり人が乗り込んできました。会社の人に休日は何をしているのか?と聞かれたので「電車に乗って、車窓や乗り降りする人をボーっと眺めていると、あれやこれや他愛のないことくらしか考えなくて、頭が空っぽになってリラックスするんですよねえ」なんていうと、「変わってるね」なんて言われました。車社会の香川県では、鉄道=不便で高いもの、お酒を飲んだときとか、車がダメな時に不本意ながら乗るもの的な印象なのでしょう。そんな不便なものに、金を払って乗る変わり者ということなのかもしれません。
児島駅のあたりでは、よぼよぼのおじいさんたちが新聞をもってベンチに座っていました。おそらくボートに行くためなんだろうけど、「若い時にやってて、今もやっているのか?それとも、年金をもらうようになって新しい趣味でボートを初めたのか」なんてぼんやり考えていました。私がとやかく言うことではないけれど、年金を競艇に溶かす気持ちはなかなか理解できないけれど、それでも金が溶けていくその興奮度合いが格別なんだろうなあと、流れる車窓越しによしなしごとを考えていると、岡山駅に到着しました。
その②に続く。
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