路面電車に乗りこみます。私が学生の時は、いわゆるチンチン電車という佇まいでたまにドイツ製の車両が走っている程度であった気がします。今の路面電車は2両編成で、中もかなり格好いいです。
始発なので座って車窓を眺めます。お買い物に使う女性など、短い区間での乗り降りもあります。沿線に住む方には欠かせない足なのだと感じます。四国は自動車が無いと生活できないのは紛れもない事実でえすが、それだからこそ列車の旅には非日常の希少性を感じます。
私と一緒に乗り鉄をしているオオカミは、運転手さんの所に行って1日乗り放題チケットを購入しているようです。 こちらはそろそろ、大杉駅への道のりを考えなくてはなくてはなりません。できるだけ路面電車に乗れて、かつ昼前後に妻の実家に帰ることが出来ることが条件です。まあ南風が1時間毎に出ているので、11時過ぎに特急が停まる駅の近くに到達できれば余裕っしょ、という楽観論でe5489で特急券の予約を試みます。10:13 高知駅発の南風は予約できそうですがその後の予約となると昼からとなります。大杉駅は特急の停まる駅と思い込んでいましたが、全部の特急が停まるわけではなくなっているようです。10:13 高知発に乗るとなると、この列車がはりまや橋に着くのは?と調べていくとどうやら10時前くらいです。そこから乗り継いでも、歩いてもせわしない時間です。阿波池田方面の普通列車も調べますが午前中の普通列車は土佐山田までです。ここ最近、因美線や芸備線など県外のローカル線を乗ることがあり存続が・・・などと思っていました。土讃線は特急がそこそこの間隔で走っているので、そこまでの危機感は感じていませんでしたが、乗ってみると山間部のユーザーは相手にされていない、土佐山田から香川までは「特急に乗らない客は客に非ず」という現状に愕然とします。哀しい気持ちとともに、年老いた義母の顔が浮かびます。
高知市に入り私の母校のある朝倉界隈からは、学生などがかなり乗り込んできます。私も学生時代「まち」でコンパがあると言えば、路面電車に乗って帯屋町界隈に繰り出したものです。在りし日を思い出しつつ、JRの時刻表を確認します。高知行きの普通列車がこの路面電車を追いかける形で走って来ており「高知商業前駅」でJRに乗り換えすれば、南風には無事接続可能なようです。鏡川橋の電停で降りることにしますが、JRとの乗り継ぎは10分弱です。
なぜか一匹オオカミも一緒に降ります。何かイベントでもあるのか?と思ったのですがこちらも、まあまあ焦っていたので先を急ぎます。電停のホームが狭く乗り換えのおばさまがホームを占領しており横断歩道に近づけません。やっとたどり着いた横断歩道にも押しボタンがありません。よくわかりませんが3分くらいして信号が赤に変わりました。センサーがついていたのか?、と思いながらスマホで駅までの経路を確認すると8分で駅に到着です。このままでは間に合わない、と思っているのに経路で示された横断歩道の信号がまた全然変わりません。よく見ると大きく迂回しており、グーグルを無視して自分の記憶を辿りなんとか駅に4分で到着。
下りの列車が発車したのが見えたので、朝倉駅で列車交換なので何とか間に合ったと汗をぬぐいつつホームに向かいます。それにしてもグーグルのいうとおりだったら、間に合わなかった。どんなロジックで経路案内してるんだろ?
なんとか列車に乗り込みましたが、1両編成なのでかなりの混雑です。学生がほぼですが、休日も学生さんは大変です。途中9:51 高知駅発のあしずりを車内から見送ります。2000系も興味のない学生たちから言わせれば、青い色の古い列車だろうと思います。変なおじさんが熱心に写真を撮るのを冷めた視線で眺められているようでした。
1両ですが車掌さんがいまいした。なぜか終点の2駅前から高知駅からの乗り継ぎ案内をしていましたが、高知駅の1駅前で間違ってアナウンスをしていたようです。運転手さんが「入明に到着です。」とアナウンスをしてナイスフォローです。高知駅到着後に「おい、しっかりしろよ」的に和やかに会話をしていました。昔のJRには日勤教育というのがあったようです。安全運行が必然なので分かるような気もしますが、若者を委縮させたりしかねないですし、人間がすることなんだからと一定の寛容さは必要だよね、などと余計なお世話なことを考えつつ高知駅のホームに降り立ちます。
ちょうど観光列車が窪川方面に走り去ります。法被をきた人が旗を振っています。
高知駅の改札です。鳥取県と同じような過疎の県ですが、高知駅は自動改札が導入されています。鳥取駅は全国唯一、県庁所在地の駅で有人改札の駅だそうです。私が行った時も駅員さんに切符を渡しました。
階段ではアンパンマンがお出迎えです。おそらく小さなお子様だと絶叫するでしょう。うちの長女もアンパンマンミュージアムに行ったときには「キャー」と絶叫した記憶があります。
特急の乗り場に向かいます。昼からの運転が無ければ、ビールと弁当を買うところですが残念。
高知駅はクジラの骨格をイメージしたとか、しないとかです。巨大な黒クジラの腹の中で、JR四国が誇るハイパワーディーゼル気動特急がアイドリングをしながら発車を待ちます。
右斜め前のご夫妻は着座するや否やで、ビールを飲みます。天気も良く、駅からの風景を見ながらのビールは最高だと思われます。羨ましい。
こちらは何もありませんが、いつも通り一応出してみます。
くろしお鉄道の奈半利線の車両がいます。デッキ付の車両です。以前、乗った時に何やらわけありげな私と同世代のカップルがデッキでいちゃつくのを延々見せられるという苦い記憶を思い出しました。思い出を再度引き出しに入れて、2度と思いださないように鍵をかけていると、南風号が発車します。
最新車両ですので気が利いています。
高知駅を出発し、いかんなく加速していきます。
土佐山田を過ぎ山間部に差し掛かります。
繁藤駅を通過します。
ここは昭和47年に繁藤災害と言って、大雨による土砂災害により停車中の列車ごと押し流されるという大災害が起こったことで有名です。私が結婚をしてからも数回は32号線が大雨で通行が出来なくなった、土讃線が復旧まで止まったというのは数回は経験しています。前述のとおり、土佐山田からの路線は特急のためだけにあったとしても、今度大災害で線路が潰えた時に復旧が出来るのかどうかという危機感さえ感じます。
災害でお亡くなりになられた方たちの故郷を残す意味でも、なんとか鉄道の在り方を考えて行かなければならいと思います。
行きのしまんとの特急料金は1000円くらいかかりましたが、南風はとくとく切符が適用。なんと半額で指定席まで取れます。乗車30分前に予約をしたので改札があると踏んでいたのですが、山間区域でネット接続が出来なくてスマホ画面を見せられないときに備えてスクショしていました。
スマホでのチケットレスは便利ですが、ちょうど改札時にアプリをログアウトしたりして気まずいこともあります。なにより充電器を忘れた時の心細さは半端ないです。そんなことを思っているうちに新改駅を通過。坪尻駅に続く土讃線2カ所目のスイッチバック駅です。子供が小さい時に、それこそ大田口の駅から土佐山田まで普通に行って帰って来れた記憶があります。そのときに新開駅でスイッチバックをしたのを思い出します。かれこれ20年近くも前のことですが、あれからも列車の本数はかなり減っているのだろうか?などと考えていると、そろそろ大杉駅に到着します。
朝の便ほどは乗っていません。少し待つとアンパンマンカラーの南風がやってくるのでそれを待ちます。改札付近では高校生くらいの少年が動画撮影をしています。
駅構内も広く保線車両用の線路脇ギリギリまで近づけます。
高知は快晴でしたが、山間部は曇天です。
ここからは若者が1名乗り込みます。
日本一の大杉 JR四国 土讃線 大杉駅の風景です。アンパンマンのにこやかな表情とは別に、2700系は低いディーゼルの唸りを上げて走り去りました。
少年が自転車に乗って走り去ります。彼が高知の残るのかどうかは定かではありませんが、彼の故郷の鉄道がこれからもあり続けて欲しいと思いながらこちらも妻の実家へと戻りました。
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